遠く離れた地震は単なる偶然ではない可能性がある
本日、長野県北部を震源とする震度5弱の地震が発生しました。マグニチュード5.0、震源の深さは約10kmという内陸地震で現在も余震が続いています。 現地の方々の被害がない事を祈ります。
今回の地震、一見すると太平洋側の南海トラフとは地理的に離れており、無関係に思えるかもしれません。しかし、最新の地震学研究では、「応力伝搬」という現象を通じて、一見無関係に見える遠く離れた地震同士が連動している可能性が指摘されています。長野県北部の地震と南海トラフ大地震の潜在的な関連性について考察してみましょう。
日本列島全体が「応力の連鎖反応」の場になっている
地震は単に局所的な現象ではなく、日本列島全体に作用する応力場の中で発生しています。特に注目すべきは「応力伝搬理論」です。これは、一つの地震が発生すると、その周辺域だけでなく、離れた地域へも地殻内の応力が伝播され、別の地域での地震発生確率を変化させるという考え方です。
地震学の文献によれば、内陸活断層によって地震が引き起こされると、震源断層周辺だけでなく、オフフォルト(断層から離れた場所)でも応力変化が生じることが明らかになっています。そして、これらの応力変化はプレート境界にも伝わり、海溝型地震の発生条件にも影響を与える可能性があるのです。
つまり、内陸地震と海溝型地震は単に別々の現象ではなく、日本列島全体で繰り広げられる「応力の連鎖反応」の一部として捉えるべきなのです。
内陸地震と南海トラフの間にある4つの相互作用パターン
1. プレカーサー現象(前兆)としての内陸地震
歴史的に見ると、南海トラフなどの巨大地震の前に内陸地震の発生頻度が増える傾向があります。例えば、1944年の東南海地震や1946年の南海地震の前には、中部地方を中心に内陸地震が相次いで発生していました。これは、プレート境界での歪みの蓄積が限界に近づくと、その応力が内陸部にも伝わり、弱い部分から先に破壊が始まる現象と解釈できます。
今回の長野県北部の地震も、南海トラフでの応力蓄積が進行している現在、その影響を受けた可能性は0ではないのかもしれません。
2. 応力トリガリング効果
一方で、内陸地震がトリガーとなって海溝型地震を誘発するパターンも考えられます。特に注目すべきは「クーロン応力変化」という概念です。これは、ある地震が発生すると周囲の断層に作用する応力が変化し、他の断層での地震発生を促進または抑制する効果を指します。
長野県北部の地震により、微小ながらも南海トラフ方向への応力変化が生じている可能性があります。その影響は単独では小さくても、他の要因と重なることで、将来の南海トラフ地震の発生時期に影響を与える可能性は否定できません。
3. 共通の広域応力場による同時活性化
日本列島全体を覆う広域応力場の変化が、内陸と海溝の両方で同時に地震活動を活発化させるケースも考えられます。特に、フィリピン海プレートの動きは中部地方の内陸地震活動にも影響を与えており、長野県北部と南海トラフ両方の地震リスクを同時に高める可能性があります。
専門家によれば、西日本は現在「地震活動期」に入っている可能性があり、内陸活断層の活動と南海トラフの歪み蓄積が同時進行している状況とされています。
4. 地下流体の移動を介した連動
近年注目されているのが、地下深部の流体(水やマグマ)の移動が地震活動に与える影響です。高圧の流体が断層に浸透すると、断層の強度が低下し、地震が発生しやすくなります。この流体移動は広範囲にわたって発生する可能性があり、内陸地震と海溝型地震を結ぶもう一つのメカニズムかもしれません。
長野県北部は地下水の豊富な地域であり、地下流体と地震活動の関連も今後の研究課題となるでしょう。
「点」ではなく「面」で捉える新しい地震予測の視点
今回の長野県北部の地震を単独の現象として捉えるのではなく、日本列島全体の地震活動の文脈で理解することが重要です。特に現在、南海トラフ地震の発生確率が高まっている中、内陸地震の活動パターンは重要な情報源となります。
地震予測の精度向上には、個々の断層だけを見る「点」の視点ではなく、広域応力場や断層間の相互作用を考慮した「面」の視点が必要です。そして、市民レベルでも、地域に関わらず日本全国の地震活動に関心を持ち、どこで起きた地震も「他人事」とせず、防災意識を高めることが求められます。
長野県北部の今回の地震が直ちに南海トラフ地震の前兆と断定することはできませんが、地震学の新たな研究視点からは、これらの現象が無関係ではない可能性を示唆しています。私たちは点と点をつなぎ、日本列島全体の地震活動を俯瞰する視点を持つことで、より賢明な防災対策を講じることができるでしょう。
備えあれば患いなし、防災リュック・避難経路や避難場所の確認を。
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